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アジアの詩−小林勇一


プノンペン


原始の森の鳥

色鮮やかな鳥
その尾の長々と
陶酔するように
美しい音色に歌っている
魔法をかけられたように
今描き上げられた絵のように
すべて隠すことなくあらわに
色鮮やかな鳥
深い森に堅い鎧をまとい
犀が角を誇らかにふりあげ
叢を歩み突進する
野生の象が全身に雄叫びをあげ
器用に鼻を使い生きる
馥郁と花が香りを放ち
深い森がつつみ隠す
石という道具を作った人間
それは呪われたものだったのか
楽園を追われる前の神の園
罪なき時の神の森
悪を知らず太陽は輝きを増し
すみわたる大空を自由の鳥が
大きな翼を広げ飛ぶ
夜漆黒の闇が覆い
森は深い眠りにつく
魔法にかけられたように
憂いもなく深い眠りにつく
目覚めれば花の芳香をまし
風はさわやかにそよぎ
大気は澄み草は高く伸び
子鹿の瞳はつぶらに
犀は角を誇らかにふりあげ歩む
犀のごとく一人進めと

釈迦は厳しき求道に生きぬ
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ネパールのジャングルで犀は必ず見られる、ここの犀は鎧のような
身を固めたインド犀でアフリカの犀より貫禄がある、恐竜時代を思わせる
あそこ簡単に行ける、世界は広い、ああいう原始郷があることは驚きである
釈迦の時代犀は身近に見られた動物だったのだ、あのジャングルの周りには
人家が迫っていて川に汚水が流されている、どうもあのジャングルの周りの
人間の家が貧弱に見えた、汚く見えた、犀の方が家も何も持たないのに堂々としていた、人間は自然を破壊するいましい呪われたもののように見えた





 南の国の仏

悠々と大河は流れぬ
カメリアに風はそよぎて
馥郁と香り放ちぬ
南の王国は古りて
その木陰に仏陀の像
微笑みたたえて安らぎてあれ
永遠の静寂の中に座してあれ
豊かに種々の果実は実り
日々の糧は労苦なく与えられぬ
悠々と大河は流れぬ
愚かなる殺戮の日々よ
欲深き性荒き外国人に習うべからじ
金に物言わす外国人の奴隷たるべからじ
南の国の温和な人々よ
古の仏陀の教えに習い尊び
その涼しき木陰に安らぎ座せ
その欲を抑えて悟りを得よ
南の国はその幸豊かなれば
その性温和にして争うべからじ
悠々と大河は流れぬ
その心も広く温和なるべし




平和の戻った村

そこはいずこか
悠々と大河は流れ
白と紫のブーゲンビリアの
ふさふさと風にそよぎゆれ
暑い明るい日ざしの昔の道
木々が深い影なす村の道
田園は広がり牛が大地を歩む
その大地は耕されて古い
大きな蝶が美しい羽を見せ飛び
人々はにこやかに笑って迎える
平和の時が再び戻って来た
静かな午後下がり南国の悦楽
床下のハンモックがゆれる
明るいブーゲンビリアの花は
風にそよぎゆれどこまでも咲いていた
その大地は広く今村々は平和であった




南国の木陰にて・・・

日がな合歓の葉は風にそよぎ
かたわらにいつも燃えるような花が咲いている
そちこちに南の国の花は明るい
田植えと稲刈りが同時に行われ
米は一年に三度とれる所も多い
果物は豊富でいつもたわわに実っている
日がな合歓の葉は風にそよぎ
村には古い樹の影なして誰かが休んでいる
色鮮やかな鳥が来てさえずり
椰子の影なす村をぬうて蝶が舞いさる
悠々と大河ながれ舟は行く
時の歩みはゆるやかに水牛が歩む村
お前はここで時をたつのも忘れ眠るが良い
深く安らかに眠るが良い
お前にはここでは十分に与えられているのだ
だからここではゆっくりと明日を煩わず
時をたつのも忘れて眠るが良い
ハンモックに揺られて眠るが良い
日がな合歓の葉は風にそよぎ・・・・
深々と大地に根ずき争わず安らぐ樹々
そこかしこ古りし樹々は深い影をなし
そこに涼しき風はそよぎ人々は休みぬ
そこでは働くより休むのがふさわしい
仏陀の教えも休みと瞑想にありしを
巨大な蟻塚は働くことの虚しさを語り
人はその木陰に休め人と樹はそこに睦みあう
一枚の粗末な衣に身をつつみ
人は欲することを少なくして休むを良しとする
たわわに果実はその木から労せずしてもたらされる
この楽園の日々を奪うことなかれ・・・・




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