叢林に沈む王都

深々と影なす叢林の道のかなたに
昔日の栄光の門が現れる
千歳もの寂びなお威厳を保ちつ
かつての栄光の都に堂々と王の顔
武勲のレリ−フは王宮の回廊に刻まれぬ
壮大なヒンズ−の叙事詩は形と成りぬ
シャムやチャンパや中国人の兵の参列
その王のいます宮殿への通路
すべての道はアンコ−ルに通じる!
象にのって優雅に各地の王はここにまみえた
王の威光は東南アジア一帯に及びぬ
千年それは雨風と日射しのみに晒されていた
今迎えるは石と化した像達
その面影は如実にカンボジア人のもの
その誇りに満ちた顔また顔
今は寂然としてただ相黙して密林に沈む
巨大な沈黙のフェースは奥からさらに奥から
現れては消えまた現れ夕陽に映えて森に沈む
マンゴ−の樹や南の繁茂しやすい樹々に
一大王都は巨大な墓場と化して沈む
いつの日かこの一大王都は石と化しぬ
炎天下そそぐ日ざしに忘れられる
その栄光と栄華の歴史は時が停止したように
大樹の根がからみつき時の風化に耐えつつ
この深い叢林の中に沈み過去のみを回想する
昼の月がぽっかりその廃虚の上にあった
王に仕える宮女が水浴びしたプールと
その肌を洗う涼しげな音が幽かにする
その深き影なす処牛のみが黙々と歩いている
まるで過去を回想し反芻しているかのように
この都は水の都にて水の上に浮いている
巨大な貯水湖が大輪の花とともに暮れる
その奥には壮大な森が陰々と影を帯び広がる
それは神韻を帯びた太古の森、幽寂の森
その影は広くなおカンボジアの大地を覆う
その奥処には人知らず無心の大輪の花が
風にそよぎ未だ見ぬ鮮やかな蝶の舞い去る
長い象の鼻が垂れやはり涼しい風がなでる
そこに石と化した仏陀は瞑目し微動だにせず
その頬をなでるのもその南国の微風である
合歓の葉は風にそよぎて静かに閉じる
マンゴ−の樹や南の繁茂しやすい樹々に
ヒンズーの塔は華麗な王都は深い叢林に沈む
そこは須弥山、宇宙の中心、エネルギーの凝集する所
太陽は宇宙の広がりの中に赫々と燃えて尽きない
かなた千歳もの寂びなお威厳を保ちつ
王は栄光の再興の日をなお夢見ている
すべての道はアンコ−ルに通じる!
インド・東南アジア・東アジアは海に結ばれる
その王の威厳は確かに再びこの地に蘇る
海上の道の久米(島)はクメ−ルの末裔なりしや
日本もまたその一端として結ばれる
それは極めて宗教的アジアの文明である
森と大地と宇宙と融合した文明である
西洋文明の次は再び東洋文明の再興である
アジアこそなべての根源であり根源に帰る


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