秋の阿武隈高原から二本松へ

小林勇一





我が休む秋の日さして石三つ

三つほど村を過ぎにき秋日和

百目木(とどめき)に蔵の二つや秋の暮

虫の音や寸借直しの店一つ

山中に節婦(かつふ)の石と水澄みぬ

(二本松)

遠き山望む本丸秋の朝

二本松城跡の朝秋の蝶

朝日さし千輪菊の乱れざり

朝の陽に武蔵を飾る滝と菊

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今日一人旅人行くや秋の薔薇

刈り入れや細田のあわれ夕暮れぬ

夕暮れて細田のあわれ虫の声

坂こえてまた家一軒虫の声



松にさす秋の夕陽やこの道の二本松へとさらにつつぎぬ

塩の道たどりきたりて二本松相馬を望み秋の日暮れぬ

わずかにも石垣残る小浜城ここにも興亡秋の日暮れぬ

山間のともしび静か小浜にそ今日我よりぬ秋の夕暮

養蚕の昔の家の殘りたる阿武隈の里の秋の日暮れぬ

石垣の反りて残るや本丸に見晴らす秋の山の高しも

秋の朝安達太良あとに坂上りまた帰り行く道の遠しも

阿武隈川山間ぬいて流るかな秋の朝静かカヌ−こぐ見ゆ

白髭の部落の道や塩の道土蔵の古りて秋の日暮れぬ



 阿武隈高原の秋

幾筋も道の別れて
阿武隈の山間深く
家々の点々とあり
その山間の段々の田に
刈り入れの季やあわれ
小川の橋をわたり
辻の杉に地蔵の古りて
虫の音かそか行く人まれに
細田への道も暮れむ
秋の夕焼け染めて
我が来る山間の道に
稲架立てて秋深まりぬ
昔養蚕に炭焼きに
賑わう村も今は淋しき
山木屋の方に我は去りにき



秋の別れ道

相馬の殿の妹あわれ
三春藩に嫁に出せしと
参勤交代の道すがら
その妹を気遣い思うと
その三春へと行く別れの道に
釣瓶落としの日は暮れぬ
阿武隈高原の道筋淋し
小浜城やわずかに残る石垣
ここにも興亡ありと
山間によりてあわれ
ともる町のともしび
ここ過ぎて二本松へ
我は急ぎ行くかな



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