北国の桜満開旅路来て尽きぬ桜をなお見ゆるかも
夕風にそよぎ鎮まる北国の森の広しも延齢草咲く
捨てられし萱葺きの家に開拓の昔思いぬ広島村に
山肌に雪一すじ残しつつ朝の日さして湖に写しぬ
美瑛
透き通るさえずりの音やトド松の林厳かに青々として
雨にぬれ丘の緑の麗しく街の灯ともる美瑛の夕べ
美しき時を惜しみつ夕日没る美瑛の丘に我は佇む
はるかにも旅路着たり古き碑をここに残して夏の日暮れぬ
一両の車両の去りて安足間しばらくは来ぬ夏の午後下がり
山小屋に泊まりて静か窓に見ゆただ清楚なる白樺の樹々
白樺の映えし一本山小屋に朝のさえずり旅人目覚めぬ
大雪の残雪厚くトド松の黒々として風に鳴るかも
留辺蕊に残る駅逓その謂れ聞きつつ夏の旅路の暮れぬ
交差して燕の飛ぶや新緑に風のそよぎて朝走り行く
興部（オコッぺ）
烏鳴く廃線の跡オホ−ツク波のひびきて夏寒しかも
牧場に牛の静かにようやくに興部（オコッペ）に着きぬ延齢草咲く
夏なれど興部寒し淋しかも旅人来り話するかも
廃線となりてあわれ興部へ旅人来り夏寒しかも
廃線にウミネコとまり夏寒し枝幸の町に一夜泊まりぬ
オホ−ツク海岸
猿払の牧場広く霧深し灯のともしかも夏の夜ふけぬ
オホ−ツクの海岸にそいかもめ飛びタンホポ一面草原満つ
遅桜咲きしも北の捨てられし家のあわれも我は訪ねぬ
面影はアイヌににしや食堂のおばさんと語る北の旅路に
雨にぬれハクサンチドリやオホ−ツクかもめの飛びて旅人の行く
タンポポにハクサンチドリ交じり咲く宗谷岬へ坂越えて行く
雨にぬれハクサンチドリあわれかな北の果てにし我は来にけり
雨にぬれ咲くハクサンチドリ
間宮林蔵の像の立つ宗谷岬
礼文島
礼文島アイヌの伝説哀しかも花しのぶ咲き風の冷たし
ここにまたアイヌの伝説岩一つ花しのぶ咲き旅人去りぬ
飛びかいぬかもめの群れや波ひびく夏の夕日に利尻富士映ゆ
磯菊にオダマキあまた礼文島波打ちひびき岩の黙しぬ
夜の明けてまずはじめそ迫り見ゆ利尻富士や久種キャンフ場
サロベツ原野
ワタスゲの風にそよぎてゆれにけり木道歩み人影消えぬ
断崖に花一面や風吹かれカモメ飛びかい人し触やらじ
幌延の駅にルピナス青しかも汽車は去り行く遠き町かも
豊富の駅にあわれや花しのぶ旅人遠く別れ去り行く
白樺にエゾカンゾウの咲き初めて一両の列車走り去り行く
また来なむ原野のかなた街の灯や旅人集う夏の夕暮
オダマキの咲く駅あわれのりおりの人も少なく一両の列車
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